お知らせ【2月12日(水)】大木亜希子、新刊小説『マイ・ディア・キッチン』(文藝春秋)発売です。
夫のモラハラに耐える暮らしをしていた主人公の白石葉(しらいしよう)が家から逃走し、小さなレストランに辿り着くところから物語は始まります。
料理監修は今井真実先生、 帯には寺地はるな先生、『人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をした』で私役、つまりアキコ役を演じて下さった俳優の深川麻衣さんがご推薦文を寄せて下さいました。とても嬉しい。
この物語を書き始めたのは、2年前です。
当時、私は『シナプス』という小説に力を注いだ後で、これから作家として生きていくのか、違う道を生きていくのか、何も分からない状況でした。
文章を書くことは好きだけれど、とてつもなくエネルギーが必要なことでした。
何事も入り込みやすい私にとって、他のことは何も出来なくなるおそれがあり、そこまでの覚悟があるのか怖く、何度も躊躇いました。
ただ、書かなければ人生が前に進んでいかない感覚があり、明確に書きたいこともありました。
それは、「辛いことがあっても、人は好きなことを武器にして自立して生きていける。そして、そのことで、新しい人生の扉が開かれていく」ということでした。
それは私自身、これまでの人生で経験してきたことです。
それを物語にどう落とし込むか考えた時、自然とこの物語が思い浮かびました。
そこからは、とても不思議なことに地球のどこかで登場人物達が実際に生きている感覚に何度も襲われました。
雨の日も雪の日も、辛くて面倒で何も手につかない日も、 パソコンのキーボードぶっ叩き続け、書き続けました。
書き上げていく中で、私にも主人公と同じような試練がやってきて、まるで「それは、あなたに必要なことだから」と、神様から言われてるようでした。
そして、書き続けていくうちに気づいたことがありました。
それは、小説家という職業は、小説を書ている時以外は「何者でもない」ということでした。
つまり私に出来ることは、小説を書いていない時はただ一人の人間としていくこと。
まっさらな気持ちで人生と向き合い、傷つくことも、哀しいことも、嬉しいことも怖がらずに経験すること。
そして、置かれた状況で幸せを感じたり、辛い時はハッキリと「私は辛いんだ!」と思い切ること。
それが結果的に、小説に反映される。ただ、それだけなのだと思いました。
そう思った途端、「何も出来ない」と思っていたところから、もっと自分の人生を欲張りに生きてみたくなりました。
それでも途中、心の深淵に何度も降りる事態があり、何度も「あ、もうムリ!」と思いました。
しかし、そんな時には都度、灯りを持った文藝春秋チームが私を照らし、「はい、大木さん、こっちでーす」と元いた道に戻してくれました。プロは凄いのネ。
結果的に、自分の人生の一部のような作品が完成しました。
この本が、一人でも多くの方に届きますように。
そして、この小説が手元に届いた方が、ささやかなお守りのように持ち歩きたくなりますように。
辛い時、一歩を踏み出せない時、勇気が出ない時、あなたのそばにいられますように。
そんな私の希望通り、大変素敵なデザインの書影に仕上げていただきました。満足オブ満足。
完成してしまったということは自分の手を離れたということでもあり、寂しい気もします。
けれども、だからこそ読者の皆様でこの作品を愛し、育てて頂ければ幸いです。どうぞ宜しくお願いします。
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